教員の仕事は素晴らしいけど復帰したいとは思わない、一番の理由は日本の英語教育の問題点。

海外移住
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今回は前回の記事の続きの内容になります。過酷な労働環境ではあったものの、教師の仕事は本当にやりがいがありました。とはいえ『また教師をやりたいか』と聞かれれば現時点での回答はNOです。というわけで今回は私が現時点では教師に戻りたいとは思わない理由について紹介していきたいと思います。
 教師を退職して海外に移住することが決まって何人かの親しかった先生に報告した時に「またいつか英語教師として復帰したいですか」とよく聞かれました。その度に私はこう答えていました。「海外生活を経てもっと自身の英語力が向上して『英語が話せると楽しいよ〜人生が変わるよ♪』って説得力をもって言えるようになったら、また教えたいと思うかもしれません。でもその時はどうせなら私立中学校に行ってみたい気もします
 なんだか色々と含みのあるセリフかもしれませんが、現場をよく知る先生方にこれを言うと、大抵の方に『ああなるほどね、わかります』といった反応をされました。私は講師経験も含めて公立の中学校で17年間英語教師を続けてきましたが、自分が英語教師になったばかりの頃に比べると様々な意味で英語を教えることが難しくなったと痛感します。もちろん私の経験上の主観がかなり入っていますが、そのように感じる2つの理由について具体的に述べていきます。

生徒の学力差が開きすぎて、授業を組み立てることが難しくなった

 とあるネット記事で『2006年に発達障害の児童数は7000人余りだったが、2019年には7万人を超えたという情報を目にしました。十余年で10倍って…驚異的な数字ですよね😨発達障害またはグレーゾーンと呼ばれる子どもが増えた理由として『2000年代初頭から発達障害の存在が浸透したために、発達障害と認識される児童が増えたのであって、そういう傾向の子どもは昔から少なからずいた』という説をちらほら耳にしたこともありますが…長年現場に身を置いていた人間からすれば、いやいや明らかに実質的にそういう子増えてるよ!というのが正直な見解です。もちろん地域の特性などによっての学力差もあるので、あくまでも肌感覚としてという言い方しかできませんが、特に教師として勤めていた最後の何年かは『こんなに1人じゃ何もできない子が各クラスに2〜3人必ずいるなんてこと昔はあり得なかったよ😥』と感じていました。大きな声で言うことは憚られますが、しかしそれが現実です。
 また、発達障害やグレーゾーンでなくとも極端に学力の低い生徒の割合も増えているように感じます。最近は多様性の尊重という観点から、学習についても子どもの自主性を尊重するべきで、学習に意欲的でない生徒に無理強いをするべきではないという方針をとっている学校も増えてきているようです。結果的に一昔前と比べて家庭の教育力が生徒の学力に反映しやすくなっているというのは少なからずあるのかもしれません。
 で、ここまでの話を聞くと「まぁそれだけ生徒間に学力や能力の開きがあれば、そりゃ昔より指導が難しいのも無理はないよね。でもそれって英語だけじゃなくて他の教科にも言えることじゃないの?」となりますよね。中学3年生のクラスに小学校低学年程度の学力の子が何人か在籍しているという現状で、もちろん他教科の先生方でも同じ悩みを抱えている方は多いと思います。ただし英語科には、他教科とは明らかに異なる英語科ならではの特性があります。それは…英語は授業の中でのペアワークが必須の教科であるということです。
 発達障害やグレーゾーンの生徒の中には、社会性を身につけさせたいという保護者の意向であったり、あるいは本人が友達と一緒に生活することを強く希望していたりと様々な理由で通常学級に在籍することを選んだという子も結構います。そういった生徒やその保護者は、教科によっては内容が全く理解できず、ただただ時間が過ぎるのを待つしかないというデメリットを受け容れています。まあ本当は良いとは言い難いのですが、最悪本人だけが困ってそれを本人が納得しているのなら、仕方ないよねというところですよね😓

 でも、でもですよ? ペアでの活動が必須の英語の授業においては、本人が困るだけではないんです😥たまたま隣の席に座った子もペアワークの時に何も活動ができない、あるいは隣の席の学力下位の子をつきっきりで支援することに徹してしまい、当人にとってはあまり有意義な時間にならないという状況に陥ってしまうことが多々あるのです。教師としてはそんな状況はなんとしても避けたいし、そもそもそんなことがあってはならないと当然考えます。しかし残念ながらいくら少人数授業にしても補助教員を配置しても、学力の低い生徒が極端に多いクラスについては全てのペアがきちんとペアワークが成立するように授業を組み立てることは本当に難しいというか、はっきり言って不可能に近いと感じました😢
 他教科の授業でもペアで活動する場面はありますが、クラスの実情に応じてペア活動が成立しにくいのであれば3〜4人の小グループ活動を取り入れるとか、学力上位の生徒の学びに支障をきたさないための工夫は比較的しやすいように思います。
 しかし英語科においては特に2021年に学習指導要領が大幅に改訂され、従来の受験重視・文法偏重の英語教育から、より実践的な英語力を身につけるための教科指導が求められるようになりました。改訂前の指導においても授業内のペアワークの割合は大きかったですが、現状でさらにペアワークは欠くことのできない学習活動になったのです。そのためは、特にペアワークを行うために使うワークシートは学力下位の子のことを考慮してかなり丁寧に分かりやすく作成することを心がけていました。それでもアルファベットが意味不明な記号の羅列としか認識できない子は自力では何一つ書き込むことができません。周りの子に教えてもらってなんとかするという子もいますが、周りとの人間関係の構築が難しい子に対してはどうしても教師の直接の支援が必要です。ワークシートを埋めないとペアの子も何もできなくなってしまうので、特定の子につきっきりで書かせていたら時間がかかりすぎて他の子達をかなり待たせてしまうといった、なんとも本末転倒な状況が起こっていました数学の通級指導(学習障害などのある生徒が一部の授業のみ通常の学級と離れて個別授業を受けられる制度)を取り入れている学校は中学でも見たことがありますが、ペアワーク必須という教科の特性を考えたら、英語科にこそ通級指導を積極的に取り入れてほしいと強く思いました。

教科書の内容が急に難しくなり、英語を教えることが楽しいと思えなくなった

 前述した2021年の学習指導要領の大幅な改定に伴い、英語の教科書はこれまでの教科書改訂の比ではないというほど格段に難しくなりました。中学校での改定に先駆けて小学校では2020年に学習指導要領が改定され、5年生から英語が「外国語」として正式科目になりました。そして小学校ですでに600〜700語を習得しているという前提で、中学校の教科書も大幅に改訂されることになったのです。私の地区の教科書は東京書籍のNEW HORIZONだったのですが、旧指導要領の1年生教科書は4〜5月にbe動詞をじっくり学んで次に一般動詞を学習するといった流れで組み立てられていました。しかし新教科書ではまずbe動詞と一般動詞の肯定文を同時に学習し、次にbe動詞と一般動詞の疑問文を同時に学習するという、最初からなんとも盛り込みすぎな内容に変わりました。これほどの大幅な改訂は今までになかったので、長年中学校で教えているベテランの先生の方がカルチャーショックは大きかったことでしょう。1年生の授業でさえ「内容がすごく難しくなった分しっかり教えなきゃと思うと、楽しく教えるなんてことを考える余裕がなくなりました😫」と現場の先生が悲鳴を上げているほどですから、2・3年生の教科書の難しさはもう恐ろしいです。今までは高1で学習していた文法が中3の教科書に降りてきたというだけでなく、1パートごとに習得する単語量や英文の量も格段に増え、正直英語教師の自分が見ても『ゔっ…』と思ってしまったほどです😅 私は教科書が改定されてから2年連続で2年生を担当しましたが、特に2年生の後半は内容が難しすぎて、教えるのが楽しいと感じることが少なくなりましたね😥

まとめ

 というわけで流石に思い入れが強すぎて長くなってしまいましたが、17年間中学校で英語を教えていた私が現状で特に問題があると感じた点について述べさせてもらいました。新学習指導要領では急速に進むグローバル化に対応するために、より実用的な英語教育に力を入れているそうですが、これ結局ごく僅かの上位生徒の英語力をブラッシュアップさせるために多くの平均的学力の子に無理を強いているだけのように感じるんですよね😥逆に英語嫌いの子が増えてしまうんじゃ…そして圧倒的学力差の問題は放ったらかしのまま、教師にはペアワークを積極的に取り入れるようにと無茶振りという😓本気で日本人の実践的英語力を上げようとするなら、改善すべきはもっと全然違うところじゃないのかなと私は思います。生徒にとっても先生にとっても「外国語を学ぶのって楽しい!」と感じられるような英語教育がこの先実現するといいな〜と切に願っております。

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コメント

  1. Mn より:

    ここまりさん、初めまして。
    私も40代,10年来の講師生活を経て、氷河期に採用になり、10年来、正教員をしている地方在住の高校英語教師です。
    私もここ5年くらいの間ずっと転職や海外移住を考えながら,どうしてもそのきっかけをつかめずにいる一人です。
    理由は、ここまりさんと似た様なものです。最近のあまりにもの低学力、そのために英語指導の意義が一層感じられにくくなったこと、日本の移民政策に対する消極性と人材不足にも関わらず特別支援導入による手詰まり等、この仕事への将来性、信用の喪失感によるものです。

    経験からお伺いしたいのですが、海外での職探しをどのようにされましたか?また、日本では教職はキャリアとみなされにくいですが,海外ではどんな仕事が候補に挙げられましたか?

    お時間構わない時に教えていただけましたら大変ありがたく思います。

    乱筆乱文失礼いたしました。

    • ここまり ここまり より:

      返信が遅くなり本当に申し訳ありません。ブログ初心者の私の投稿にレスポンスいただけて、とても嬉しく思いました。高校の方がまだ、中学校より指導の難しさは少ないのかなと思っていましたが、高校にも高校の難しさがありますよね。海外全体のことはよくわかりませんがマレーシア就職はそんなに難しくはなかったです。マレーシア専門の転職サイトもたくさんありますよ。『KL-Wing』や『カモメアジア』が有名かなと思いますが「マレーシア 求人」などで探すと色々見つかると思います。職種は一番多いのが日本人カスタマー向けのコールセンター業務ですが、時々営業職なども見かけます。教師は年度終わりでないと辞めにくく、次の職が決まってから退職するということが難しいので、余計に踏みとどまってしまいますよね。でも5年も迷っているのなら、思い切って飛び込んでみるのもアリかと思います。年齢制限を設けている会社も多いので、思い立ったら早めに!!と個人的には思います。これからも色々な情報を発信していく予定ですので宜しくお願い致します。

      • Mn より:

        本日返信に気がつきました,丁寧で親身なアドバイスありがとうございます^^!

        マレーシア就職は意外に身近なんですね…まだまだ転職への意志はあるので調べてみようと思います.
        また,引き続きブログも拝見いたします。それではまた…

        • ここまり ここまり より:

          これ気付いてもらえるといいのですが(^^;)
          実は最初にコメントをいただいた時にもし良ければ私がお世話になっている転職エージェントさんを紹介しようと思ってメール差し上げたのですが、受信ボックスがいっぱいとのことで戻ってきてしまいました(^~^;)よろしければTwitterアカウントの方にDMくださいませ。
          https://x.com/Cc1210Hello

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